薬剤関連顎骨壊死②

前回に続き、MRONJのお話です。

なぜ発症するのか?

おおまかには分かっていますが、本当になぜなのかはまだ明確に解明されていません。

今回はかなり個人的な見解やエピソードを書きます。

これらは、日々日々研究が進むため、古くなり間違った見解になったりするので、ご注意して下さい。

 

④なぜ顎に生じるの?
色々議論がありますが、個人的な見解のみを書いておきます。
口腔内は、皮膚ではなく粘膜であり、筋肉に囲まれていない骨だからと思います。
粘膜は、皮膚と違い比較的や柔らかく、薄い部分が多いです。
骨が硬くなるということは、骨の中のすかすかした部分が減るということです。
すかすかした部分というのは血管や神経など様々なものが通る部分でもあります。
ガラスのように硬くなった骨は、中の血流が非常に乏しくなります。
そのため、骨の上にある粘膜に血流が供給されなくと壊死し骨露出をきたします。
口腔内は、ばい菌だらけです。骨露出すればすぐに感染の餌食になるでしょう。
他の部位では、非常に血流豊富な筋肉に覆われています。
こつからの血流が乏しくても、代替する場所から血液を得ることができるからではないかと思います。

頭の骨も放射線治療後などに骨壊死をきたすことがあると言われています。
頭の一部は筋肉に覆われていないからでは?と考えています。

⑤リスク因子は?
多数のリスク因子が指摘されていますが、どの程度なのかというのはまだ検証されています。
局所的には、歯周病、抜歯、口腔衛生状態、義歯の適合度
全身的には、糖尿病、自己免疫疾患、人工透析、骨疾患、貧血、喫煙、他に遺伝的な要因

昔、大学病院にいたころ、骨転移時に使用した場合、MRONJの因子はなにかと研究していました。
研究途中で私は、浜松に出向したので他の先生に続きをお願いしました。
2021年には、現西部医療センター歯科口腔外科部長の加藤先生に引き継いで頂き、論文にもなっています。
論文には、常勤退職後でしたが、名前を載せて頂きました。

A retrospective study on the incidence and risk factor of ARONJ
Shinichiro Kato; Hiroyuki Takashima; Shota Furuno; Mari Kako; Michinori Maeda; Sumiyo Hishida; Hironori Miyamoto; Yasuyuki Shibuya
JOURNAL OF ORAL AND MAXILLOFACIAL SURGERYMEDICINEAND PATHOLOGY 33 (5) 489 - 493 2212-5558 2021/09

骨転移の患者のみを対象としていますが、低カルシウム血症と投与回数が危険因子ではないかと示唆されています。
あと、BP製剤からデノスマブに移行するのもリスクと考えられました。

⑥発症メカニズム
MRONJは口腔外科の分野では10年ほど前はホットな内容でした。
誰にもわからず、基礎研究も少なかったので、多数の研究者が基礎研究を報告しています。
ただ、動物実験を行う上でMRONJと同様な状態にするのは難しいのです。
このモデルとなる動物モデルができたら、それでも注目論文となります。
私も基礎研究をしたかったのですが、モデルがなく断念しました。


私個人の思いですが、VEGFという血管内皮細胞増殖因子が大きくかかわっていること考えていました。
ただ、もう研究者ではないので、それ以上は妄想世界です。
誰か研究して論文報告してくれないだろうか。

 

次回は、ではどのくらいの頻度で起こるのか?予定します。

 

院長

前田道徳

名古屋市立大学口腔外科に研修医から10年以上勤める。

同大学の医学博士。

日本口腔外科認定医。

米の木まえだ歯科

日進市米野木町丁田119-4

2025年11月27日