院長コラム

院長の不定期コラムです。不定期ですが、月一回の更新は目指してます。

歯科治療のことや病院のことをupしていきます。

facebookと内容が同じなんて言う事もあると思いますが、ご容赦を。

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親知らずの話③

「親知らずを抜くときのリスクって何ですか?」

細かくは直接聞いていただくか、ホームページの親知らず抜歯のページに記載しています。

腫れる、痛い、血がでるなどのリスクは、今回は記載せず3つ大きなリスクを記載します。

①感覚神経麻痺(触った感じがなくなるか、鈍くなる)
親知らずの周囲には、下唇と舌の触った感覚を受け持っている神経が存在します。
下歯槽神経、舌神経といいます。
動きを受け持っている神経は別途存在しますので、動きには影響はでません。
が、触覚がないというのは違和感が多く、初めは動きの不自由さを感じる方がほとんどです。

大学病院勤務時代、私が施術してこの麻痺が発生したことがあります。
若い方で、そこまで神経の走行が複雑な患者さんではなかったですが、発生しました。
この症状はある程度期間がたち、麻痺が固定した場合、治ることはほとんどありません。

どれくらいで確率で発生するのか聞かれますが比較的最近の文献では
下歯槽神経麻痺が4.1~3.9%、舌神経麻痺が6.5~0.4%程度と記載がありました。
2年経過後、下歯槽神経麻痺は0.7%に残遺、舌神経は1.0%に残遺していたとも記載があります。
うちの大学で統計を取った際は、少しこの文献よりは低かったですが、大差はありません。

リスクを完全に回避することはできないですが、CTを撮影することで、リスク評価は非常に大事であると思います。

②ドライソケット
抜歯を施術した部位の治癒過程が上手くいかなかったことで、強い痛みが続く状態です。
だいぶ昔の文献ですが、発症率は5.5%前後で、20歳以上の施術症例は発生率に大差はないという統計がありました。
追加の処置が必要になることも多いです。

2つイメージが付きにくいリスクを記載しましたが、細かいリスクや非常にまれなリスクも存在します。

これらのリスクは怖がらすために説明しているわけではありません。
おそらく30年以上前なんかは、なんの説明もせずに抜歯をしてたんでしょうが、今の時代は患者さんにも選択お願いします。
抜く、抜かないという選択がある以上は、ある程度代表的なリスクを知っておいて選択しなければなりません。

これで親知らずシリーズは終わりにします。

2022年12月03日

親知らずの話②

「親知らずって早く抜いたほうがいいですか?」

若いうちに抜歯することのメリットが4つほど頭に思いつきます。

①だんだん仕事や家族などで、まとまった時間が取れずに痛みがでても、抜歯に行けない
大学時代は、本当に大学生の患者さんが多かったです。大学生で、夏休み中、就活が終わって勤務が始まる前などの時期の患者さんが多かったです。
仕事を始めると、有給の日数にも上限がありますし、責任ある立場になると休めるタイミングが自分都合に決めればいことも多いです。

②親知らずの潜在的なリスクを持ち続ける期間が短くなる。
親知らずには現在症状がなくても、リスク(急に痛みがでる、手前の歯の虫歯、歯並びへの影響)などが潜在的に存在します。
痛みが出た時期に抜歯を行うというのも、患者さんの選択としては尊重します。
ただ、同じ方で40才で痛みがでて抜歯をした場合と20才で先立って抜歯した場合との比較をしてみます。
抜歯をしたという事実(心身に対するダメージ)は両者は変わらず、前者は20年間リスクを持ち続けたというロスがあります。
そのリスクの影響の大きさには個人差がありますが、後者はこの先親知らずのリスクはないという得があります。
この得というのは実感するには難しいですが、実際手前が虫歯になってしまった方にとっては、明確なロスと認識しやすいです。
正確な先読みは不可能なので、親知らずを抜かずに、歯や歯並びに影響が全くでずに生涯貫けるというのは・・・どうなんでしょう・・・

③抜歯を抜いた後の治りが良い。
日々の臨床では、抜歯をあとの歯ぐきの治りや、抜いた穴のふさがりのスピードに差を感じます。
若い方は抜歯後の反応が早く、治癒へのスピードが良いと感じます。

④抜歯がしやすい
これって、歯科医師側のメリットでもあるんですが、患者さんにとっても施術時間が短く済むことが多いです。
親知らずは、25才前後まではえようとする力が豊かです。
そのため、周囲の骨なども含めて固定されていないことが多く、抜くときの硬さに差を感じます。

2022年11月04日

親知らずの話①

「親知らずって抜かなければいけないんですか?」

ってよく聞かれます。

特に斜めになっている親知らずを残すメリットはほとんどなくてデメリットばかりです。

一番大きなデメリットは急に痛くなることがあることです。

このタイミングは、誰もわかりません。
一番奥にある歯なので、日常での歯磨きでは不十分なことが多く、虫歯になったり、周りの歯ぐきが不衛生になります。
少し、歯肉炎みたいにシクシクするなと思ったら、急に腫れて痛みがズキズキしてきます。

年末年始の前だったら・・・
(年末年始には近くの歯医者さんは休みの場合が多くて、緊急歯科診療所に行くしかない)

海外旅行中だったら・・・
(海外旅行の保険には歯科治療が含まれないプランもあるので、注意が必要)

大事な受験前だったら
(腫れた場合、薬を服用しますが、すぐに改善するわけではありません。私が学生だったころは、歯科医師国家試験前には抜いておくようにと大学側からのおすすめがありました。)

大学病院時代には、患者さんとともに色々悩んだケースがあります。

発展途上国に海外出張中で一時帰国しているが、親知らずが痛いが、次週にはまた出張に行く。帰ってくるのは来年。

ある程度の企業の海外出張の保険には、歯科治療が含まれますが、まずその国の歯科治療レベルが非常に低い場合・・・不安ですね。

妊娠中の親知らずの痛みがでたケースも、使用できる薬剤などに制限が出ることなどから、疼痛のコントロールに不安がありました。

虫歯の痛みの場合は、多くケースで抜歯以外に改善方法がありません。
この場合は、患者さん自身の都合などに合わせることはできないことが多いです。

ただ、結論の前に、大なり小なり親知らずを抜いて痛い思いをするのは間違いありません。
単純に怖いし避けたい気持ちはある人間ですから当然あります。
私個人も痛い思いは避けたい気持ちでいっぱいです。

結論として、歯医者としての考えとしては
『痛みがないうちに、自分の都合に合わせた日程で、計画的に抜歯をすることがオススメ』
と思います。

2022年09月10日