薬剤関連顎骨壊死①
(>_<)?「骨粗しょう症でボナロンを内服していますが歯医者さんで抜歯をしていいですか?」
GEMINIの回答です。
ボナロン(主成分:アレンドロン酸ナトリウム水和物)は、ビスホスホネート系薬剤という種類の薬で、抜歯などの歯科治療を行う際に、まれに顎骨壊死(がくこつえし)という副作用のリスクが高くなることが知られています。
しかし、一律に抜歯ができないわけではありません。大切なのは、必ず歯科医師にボナロンを服用していることを伝えることです。
🚨 重要なこと
歯科医師に「ボナロン」を服用していることを必ず伝えてください。
骨粗しょう症の主治医(ボナロンを処方している医師)と歯科医師が連携して、治療方針を決める必要があります。
🦷 抜歯の判断について(一般的な情報)
一般的なガイドラインでは、ボナロンの服用状況やその他の要因によって、抜歯をするかどうかの判断や、薬を一時的に休止する期間などが検討されます。
服用期間が3年未満で、ステロイド剤などの併用がなければ、特に問題なく歯科治療を受けられることが多いです。
服用期間が3年以上の場合や、ステロイド剤などを併用している場合は、休薬が可能であれば、少なくとも3ヶ月間はボナロンを中止してから抜歯などの処置を受けることが推奨されることがあります。
ただし、これはあくまで一般的な情報であり、あなたの全身状態、骨粗しょう症の状態、抜歯の必要性、服用している期間、他の薬の併用状況など、個別の状況によって判断が異なります。
✅ あなたが取るべき行動
歯科医師に予約する際、または受診した際に、ボナロンを服用していることを明確に伝えてください。
骨粗しょう症を診てもらっている主治医の名前と連絡先を歯科医師に伝えて、連携を取ってもらいましょう。
歯科医師は、これらの情報に基づき、安全に抜歯を行うための最善の計画を立ててくれるはずです。
ご心配な点があれば、まずはボナロンを処方されている主治医にも相談してみると良いでしょう。
以上です。
ビスホスホネート製剤(以下、BP製剤)は歯科の外科治療の際に、よく言われる内容です。
そこで、かなり専門的になりますが、ガチコラムとなります。
①困ったことに歴史があさく、ガイドラインがない。
これが困る要因となります。
BP製剤が使用され始めたのは、90年代に大規模試験が行われ、そこから数年後から日本でも使用され始めました。
薬剤関連顎骨壊死(以下、MRONJ)が報告されたのは、2003年にMarxが報告し、2004年には骨粗しょう症で使用されるBP製剤でもMRONJが報告されました。
それ以降、様々な薬剤が発売され、同様な報告がされ、2014に初めてアメリカでポジションペーパーが、それに伴って2016年に日本で初めてポジションペーパーが公開されました。
ポジションペーパーって何?って思われるかもしれませんが、学会の「見解」「主張」で、ガイドラインみたいな「行動指針」ではないものです。
つまり、こうすればよいとという手順が書かれているわけではないです。
とは言え、ポジションペーパーは学会が、多数の論文の理論、議論を重ね、公開しているので診療には役立ちます。
とはいえ、私が口腔外科で働きだしたときには、このポジションペーパーもなかったのです。
AAOMS(アメリカの学会)からポジションペーパーが出た際は、時間かけて英語を読んだ記憶がありますね。
つまり、10年前は、だれもが如何すれば良いかわからず、それ以降も、明確な答えは出ていないのが現実です。
ちなみに日本では2023年改訂ポジションペーパーが最後です。
②MRONJの原因の薬剤
初めは、MRONJじゃなかったんです。
BRONJと呼ばれており、その後にARONJと呼ばれ、最新はMRONJと名前が変更されていきました。
頭文字の単語が広範囲になったんです。
ビスホスホネート→骨吸収抑制薬→薬剤
あっDRONJってのもありましたね。
当初はBP製剤特有の副作用とされていました。
BP製剤は、癌の骨転移、高Ca血症、骨粗しょう症に使われます。
骨は、常に代謝されており、骨芽細胞が骨を作り、破骨細胞が骨を吸収しを繰り返しているんです。
BP製剤は、骨の中に吸収され、そしてそのBP製剤入りの骨を破骨細胞が吸収すると、破骨細胞がアポトーシス(消えちゃう)するんです。
それによって、破骨細胞の数が失われ骨の吸収は抑制され、骨芽細胞が骨を作り続けることにより骨が硬くなるといった感じです。
骨が物理的に硬くなると癌細胞は、骨の中に入り込めなくなるので、骨転移にも有効です。
骨芽細胞が骨を作り続けると、血中のCaを骨の中に取り込み続けるということになるので、高Ca血症にも有効です。
ただ知って頂きたいのは、骨粗しょう症と骨転移の際に使うBP製剤の量はかなり違います。
どちらもゾレドロン酸という薬効成分を使う薬剤がありますが、
骨転移の際は、4mgを毎月投与します。
骨粗しょう症では、5mgを一年に一回投与します。
年の使用量は9倍以上違います。
別物と考えて頂くのが良いかと思います。
この後に抗RANKL抗体が出てきました。通称デノスマブです。
これは、RANKLが破骨細胞の分化・成熟を促す役割を担っています。
破骨細胞のRANKLとつながる部分にデノスマブが割り込んでしまうことで、破骨細胞を抑制する薬剤です。
2012年に骨転移用に出た際は、おいおいBP製剤でもMRONJの副作用がいまいちわかってないのに、さらに新しい薬かと思ったものです。
2013年には、骨粗しょう症の対する薬剤も承認されました。
これも、使用量はかなり違っており、骨転移には120mgを毎月、骨粗しょう症は60mgを半年に1回です。
こいらは年間で12倍ですね。
その後からは、ベバシズマブやスニチニブなどの血管新生阻害薬にも報告され、免疫調整役にも報告されています。
なので、薬剤全般に関連した顎骨壊死と名前を統一し、呼ばれています。
③顎骨壊死とは?
抜歯などに限らず、骨表面が口腔内に8週間露出した場合に診断されます。
ただ、ポジションペーパーでは、画像診断か骨壊死を認める症例は、骨露出を共わなくても、MRONJと診断することを支持するとされています。
顎骨壊死はstage分類されており、1~3あります。
stage1の診断はあまり見受けられません。感染が伴わないので、見受けれらないかと。
stage2とstage3は範囲の違いで診断されます。
ポジションペーパーではstage0に関しても明言されていますが、診断に困る状態ですね。
画像診断でと書かれていましたが、かなり難しいです。
明らかな、遊離骨(骨壊死がおき、健康な骨から離れていくこと)があれば診断が付きやすいですが、それ以前は難しいです。
明確に診断するには、MRIか骨シンチグラフィー、SPECTが必要かと思います。
これらは総合病院でしか診断できませんね。SPECTとかは対応できない病院もあります。
組織採取しての診断は、現状では難しいという報告もあり、病理診断の評価は慎重な姿勢が必要です。
次回は、なぜおきるのか?に注目してPart②を書きたいと思います。
院長
前田道徳
名古屋市立大学口腔外科に研修医から10年以上勤める。
同大学の医学博士。
日本口腔外科認定医。
米の木まえだ歯科
日進市米野木町丁田119-4
TEL:0561-73-2211

