親知らずの話③

「親知らずを抜くときのリスクって何ですか?」

細かくは直接聞いていただくか、ホームページの親知らず抜歯のページに記載しています。

腫れる、痛い、血がでるなどのリスクは、今回は記載せず3つ大きなリスクを記載します。

①感覚神経麻痺(触った感じがなくなるか、鈍くなる)
親知らずの周囲には、下唇と舌の触った感覚を受け持っている神経が存在します。
下歯槽神経、舌神経といいます。
動きを受け持っている神経は別途存在しますので、動きには影響はでません。
が、触覚がないというのは違和感が多く、初めは動きの不自由さを感じる方がほとんどです。

大学病院勤務時代、私が施術してこの麻痺が発生したことがあります。
若い方で、そこまで神経の走行が複雑な患者さんではなかったですが、発生しました。
この症状はある程度期間がたち、麻痺が固定した場合、治ることはほとんどありません。

どれくらいで確率で発生するのか聞かれますが比較的最近の文献では
下歯槽神経麻痺が4.1~3.9%、舌神経麻痺が6.5~0.4%程度と記載がありました。
2年経過後、下歯槽神経麻痺は0.7%に残遺、舌神経は1.0%に残遺していたとも記載があります。
うちの大学で統計を取った際は、少しこの文献よりは低かったですが、大差はありません。

リスクを完全に回避することはできないですが、CTを撮影することで、リスク評価は非常に大事であると思います。

②ドライソケット
抜歯を施術した部位の治癒過程が上手くいかなかったことで、強い痛みが続く状態です。
だいぶ昔の文献ですが、発症率は5.5%前後で、20歳以上の施術症例は発生率に大差はないという統計がありました。
追加の処置が必要になることも多いです。

2つイメージが付きにくいリスクを記載しましたが、細かいリスクや非常にまれなリスクも存在します。

これらのリスクは怖がらすために説明しているわけではありません。
おそらく30年以上前なんかは、なんの説明もせずに抜歯をしてたんでしょうが、今の時代は患者さんにも選択お願いします。
抜く、抜かないという選択がある以上は、ある程度代表的なリスクを知っておいて選択しなければなりません。

これで親知らずシリーズは終わりにします。

2022年12月03日